
11歳8カ月の女の子です。今日は退院の日です。糖尿病で自宅にてインスリン、食事療法を行っておりましたが、体調を崩して入院しておりました。糖尿病になると、尿に糖が出るために浸透圧で尿の量が増え、結果再利用するはずの水分量が減り体が水分を補おうと水を飲み始めます。いわゆる多飲多尿です。この状態で病院に来られることが多いです。尿に糖が出るのは多くは血糖値の上昇に由来します。通常膵臓から分泌されるインスリンによって体中の細胞に血液中の糖を配り、これによって血糖値は本来一定に保たれます。糖を受け取った細胞はエネルギーを産生し、我々は動くことができるのです。血糖値が高いということは、体中の細胞に糖を配っていないということになります。だから細胞にとっては低血糖ということになります。それでも細胞はエネルギーを産生しなくてはなりませんからもらえなかった糖の代わりに脂肪を使い始めます。糖尿病の末期に痩せてくるのはこのためです。しかし脂肪をエネルギー源に使い始めますとケトン体と呼ばれるものができてしまいます。車にたとえますと本来ガソリン(糖)で走っている車(細胞)に、ガソリンが手に入らなくなったから軽油(脂肪)で無理に走らせたら変な排気ガス(ケトン体)が出てきたというところです。このケトン体が血液に蓄積し、尿にまで出てきた状態をケトアシドーシスといい、血液が酸性に傾いてしまう危険な状態です。この子はケトアシドーシスでしたが、なんとかその状態は脱しての退院となりました。これからの維持もがんばりましょう。お大事に。
ファミリー動物病院