
1歳10カ月、男の子です。最近
トイレに長く入り、おしっこが出にくいようです。排尿障害といいます。

原因追求のため、腹部のレントゲン撮影検査です。

膀胱結石とかはないようです。また、膀胱の大きさからも排尿はできているようです。胃の中にご飯も入っているので、排尿障害以外は調子が良いようです。同時に排便障害なのではないかも確認いたします。

尿の検査が必要です。人間のように紙コップに自分で採ってきてはくれないので、採尿する必要があります。一番ストレスなく採尿する方法がこの膀胱穿刺です。体外から直接膀胱に注射して採尿いたします。一見痛そうに見えますが、ほとんどの動物で簡単に採尿できます。むしろ尿道からカテーテルを入れての採尿は、よほど痛がりますし、尿道を傷つけたり、細菌を膀胱に押し入れたりするので行いません。ご家庭で採ってきてもらう方法もございますが、尿は新鮮でないと正確な診断ができないことがあります。

採尿した尿で、まず尿試験紙という検査を行いました。これにより、尿のPH(酸性とかアルカリ性とか)、尿たんぱく、尿糖、血が混じっていないか、などをみます。尿試験紙は本来肉眼で基準の色と検体の色を見比べて(比色検査と言います)行いますが、検査する人のスキルで多少の違いが出てしまいます。そこで肉眼の代わりに見てくれるのがこの機械です。

採尿した尿です。一見普通に見えますが、先ほどの検査でかなりの血が混ざっていたことが分かっています。

遠心分離器にかけてみます。

尿より重いものは下に沈みます。尿沈渣といいます。この様に血液が下に溜まって血尿だったのがわかります。

顕微鏡で見るといたるところに結晶が出ています。オスの猫の尿道は尿をスプレーという行動で吹き付けるように出したいため、途中で急に細くなている部分があります。水道のホースをつぶすと遠くまで水が飛ばせるのと同じ仕組みです。だからこのような小さい結晶でもすぐに詰まってしまい、おしっこが出せない尿閉という命の危険な状況を作ってしまいます。結晶を作ってしまう原因はいくつかあります。そのひとつに飲水量の低下がございます。

気温が下がると動物は飲水が減ります。これにより尿が濃くなり、また排尿回数が減ることにより結晶を作る時間を与えてしまいます。これは尿比重計です。ヘスカ式で犬、猫用です。今までのたんぱく屈折計は人の尿比重の目盛だったため、かなりの誤差がありました。この機械の登場で正確に犬、猫の数値で測定することが可能となりました。トイレもたいてい寒いところにおいてありますからなるべく我慢する子もいます。排尿とは尿をすることによりその水流で尿路系を清潔に保っていますから、人も猫もトイレを我慢することはよくないことです。膀胱炎になると水を飲みなさいというのはそういうことです。尿が増えますから。他にも原因はいっぱいありますが今日はここまで。お大事に。
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