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クリヨペンを使ってみました


10歳11ヶ月のキャバリア、女の子です。


鼻の下に腫瘤があります。腫瘤はその外見だけで良性、悪性の判断はできませんので、小さいうちに摘出することが大切です。摘出は外科切除が一般的ですがその場合全身麻酔局所麻酔が必要なことが多いです。全身麻酔の場合、かけるには健康的に問題のある子や、飼い主さんが全身麻酔をかけることに抵抗を感じるなどの問題があります。局所麻酔の場合、切除部位があまりにも大きかったり、出血が予想される場所、局所麻酔で痛みは取れていますが動物は動けてしまいますので動くと外科が危ない場所(例えば目の周り)など全身麻酔や局所麻酔での外科が困難な局面があります。


皮膚腫瘤治療の第三の選択肢として凍結(液体窒素)療法があります。液体窒素を綿棒やスプレーで腫瘤に塗り、取りたい腫瘤を低温凍結することにより壊死させて治療するものです。人間の皮膚科ではよく行われておりますが、液体窒素の保管には専用の容器が必要であったり、容器に入れておいても約1週間で気化して無くなってしまいますので皮膚科以外の病院で維持するにはコストがかかりすぎてしまい、それを患者様に負担していただくことは困難です。そこでこのクリヨペンという道具がございます。持ち手の部分に液化亜酸化窒素のカートリッジを入れて使います。


実際に使用してみました。上の動画をクリックできない方はこちらをクリック。照射部分が凍結して白くなっているのがわかりますでしょうか?照射時間は腫瘤の厚みにより変わります。1mmにつき5秒くらいです。白い凍結部分は約20秒で溶けます。1分おいて2度目の照射を行います。1個の腫瘤につき1~3度の照射を繰り返します。腫瘤は時間の経過と共に壊死して自然脱落しますが、脱落するまで1~2週間に1回の再診が必要です。脱落していなければそこでまた照射を行います。私自身も人間の皮膚科でイボをとるのに週1回、計4回の処置で治りました。クリヨペンを使ってみた感想ですがペンという割には大きく重いです。しかしカートリッジを入れなくてはならず、中のガスの圧に耐えるためには構造上仕方が無いでしょう。冷却ガス噴出も勢い良く出るため後ろにそらされないためにもある程度の重みも仕方のないことなのでしょう。ただ繊細な動きをさせる必要があるのですがスイッチが重く硬いのは改良の余地がある気がします。ただし従来のクリヨペンにはスイッチすら無かったので扱いやすくなったようです。皮膚科で使用される液体窒素は-196℃ですがクリヨペンは-89℃と温度が高いため、凍結に時間がかかりますが、液体窒素を管理することを考えると仕方がありません。いずれにせよ患者様に治療の選択肢が増えることはとても良いことだと思います。ファミリー動物病院

プロフィール

familyanimalhospital

ファミリー動物病院(調布市)の診療日誌を時間が許す範囲でつけていこうと思います。https://www.familyah-sengawa.com/
これは日々当院に来院される患者さまにその設備などをお披露目する機会がなかなかないので症例を報告しながら見ていただけたらと思います。
症例報告に当たっては我々がどのような病気と日々奮闘してきたかもご覧いただき、参考にしていただけたらと思います。
症例報告なのでやや生々しい画像も含まれることがありますので見るに当たっては自己責任にてお願いします。

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