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猫の鼠径部陰睾(そけいぶいんこう)


生後9ヶ月の男の子です。今日は去勢手術です。右の睾丸はきちんと陰嚢にあるのですが、左の睾丸が見当たりません。睾丸は赤ちゃんがお母さんの中にいる時は通常まだお腹の中にあります。それが生後まもなく鼠径部(内股)から陰嚢の中まで下降して行くのです。通常は生後まもなくから生後30日位で完了しますが、完了しないのが陰睾です。この子は左睾丸が内股にありました。赤い円内の膨らんでいる所がそうです。内股に残っているので鼠径部陰睾です。


陰睾側の睾丸は体温にさらされ続けるため精子を作る能力はありません。でもホルモンは出ますので男の子のような行動は取ります。スプレーもします。片方が陰睾でなければ精子は正常な睾丸が作りますので繁殖能力はあります。両睾丸とも陰睾なら繁殖能力はありません。陰睾は遺伝異常なので通常このように去勢手術をしてこれ以上遺伝しないようにします。また本人にとっても将来癌化する可能性があるため必ず手術は受けましょう。左右の内股の中央を切開して陰睾側の睾丸を体外へ牽引します。手術はファミリー動物病院では必ず陰睾側から行います。


仮に手術中に不測の事態が起きて手術を途中でやめなくてはならないときに、将来病気になるかもしれない方を残したくないからです。繁殖は単頭飼育すれば問題ないわけですから。PKシステムにより短時間に動静脈をパウチできますので、麻酔に対するリスクがある子には麻酔時間の短縮を行うことができます。


次に正常な睾丸も陰嚢から引き上げて同じ手術創から摘出します。こうすることで傷は1箇所で済みます。ウサギの去勢手術に似ています。


摘出した睾丸です。通常陰睾側の睾丸が小さいです。日帰りの手術となります。お大事に。

プロフィール

familyanimalhospital

ファミリー動物病院(調布市)の診療日誌を時間が許す範囲でつけていこうと思います。https://www.familyah-sengawa.com/
これは日々当院に来院される患者さまにその設備などをお披露目する機会がなかなかないので症例を報告しながら見ていただけたらと思います。
症例報告に当たっては我々がどのような病気と日々奮闘してきたかもご覧いただき、参考にしていただけたらと思います。
症例報告なのでやや生々しい画像も含まれることがありますので見るに当たっては自己責任にてお願いします。

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